閉校した小学校がイエナプランの学び舎に 大日向中等教育学校の校舎改修が「2026年度グッドデザイン賞」を受賞

長野県南佐久郡佐久穂町の学校法人茂来学園(理事長:中正雄一)が運営する大日向中等教育学校で、校舎改修プロジェクトが2026年度グッドデザイン賞を受賞しました。受賞企業は設計を担当した株式会社 建築築事務所で、事業主体は学校法人茂来学園です。
改修の対象は、築50年が経過し、閉校から10年を経た旧佐久西小学校です。この建物を、イエナプラン教育を実践する中等教育学校として生まれ変わらせました。限られた予算のなかで断熱改修への投資を優先し、生徒の学びの環境向上をいちばんに考えて判断したこと、木材を工夫して使い温かみのある空間に仕上げたことが評価されています。

出発点は「子どもを真ん中に置いた6年間の学び」
校舎づくりは、「旧校舎をどう改修するか」から始まったわけではありません。最初に立てられた問いは、「子どもを真ん中に置いた6年間の学びに、どのような場が必要か」というものでした。
イエナプラン教育では、一人で集中する、小さなグループで話し合う、全体に向けて発表するといった、さまざまな学び方が生まれます。そこで、決められた教室だけで学びを完結させるのではなく、生徒が活動に合わせて場所を選び、必要なときに仲間と関われる環境が目指されました。
2022年からは設立準備室と設計者が対話を重ねてきました。児童生徒・保護者・教職員とのワークショップも行い、教育への願いと、制度・資金・既存校舎の条件をすり合わせながら計画を形にしていきました。

校舎改修で取り入れられた3つの工夫
生徒の学習環境を優先し、断熱・遮熱と素材の工夫で校舎を再生
旧校舎には、夏の暑さや冬の寒さ、建物の傷みといった課題がありました。建設費が高騰するなか、限られた予算で何を優先すべきかを検討した結果、生徒が毎日過ごす学習環境を整えるために断熱改修へ投資することを選んでいます。天井には厚さ8mmの軽量な断熱シートと遮熱性の透湿防水シートを使い、床には断熱層を設けたうえで県産材の針葉樹合板を張りました。ふだんは隠される下地材をあえて仕上げとして見せ、木材と組み合わせることで、機能性と温かみを両立させています。
約70mの大廊下を「学びのパサージュ」に
増築を重ねてできた約70mの大廊下は、ただの通路から、読書や対話、展示、発表などが生まれる「学びのパサージュ」へと姿を変えました。本棚・机・ベンチなどで多様な居場所をつくり、一人で本を読む、仲間と話す、作品を見せ合うなど、生徒が活動に応じて過ごせる場所を校舎全体に広げています。
間仕切りと家具のあり方を見直し、生徒自らが学ぶ場をつくれる空間に
特別教室を除き、教室と廊下の間仕切りを取り払って一体的な空間にしました。お互いの活動が見える環境のなかに、一人で集中できるスペースや少人数で集まれるスペースを用意しています。単管パイプでつくった什器や可動家具を取り入れ、使い方に合わせて配置を変えられるようにしました。開校後は、生徒たちが家具を動かして自分に合った居場所を見つけるなかで、設計段階では想定していなかった場も生まれているそうです。一方で、家庭科室などの特別教室は、安全性や機能に応じて区切りを残し、学びの内容に合わせて空間のつながり方を設計しています。

審査委員が注目したポイントと、これからの学校づくり
審査委員は、少子化で学校の統廃合が進むなか、廃校を地域再生の起点として活用する試みが近年増えていることに触れたうえで、建設費が高騰する状況では限られた予算をまずどこに集中させるかの判断が事業の価値を左右する傾向にあると指摘しています。そのうえで、本プロジェクトが断熱改修への投資を決め、生徒の学びの環境向上を最優先したことを評価。木材を押縁として上手に使い、ローコストながら生徒への気持ちのこもった優しい空間に仕上げている点にも好感が持てるとコメントしています(出典:グッドデザイン賞公式サイト)。
大日向中等教育学校は、開校を完成ではなく学校づくりの新たなスタートと位置づけています。生徒がどこに集まり、どう家具を動かし、何を見せ合うのか。そうした日々の様子を手がかりに、教職員や設計者などが学習環境を見直し、更新していく方針です。今回の受賞を励みに、生徒・教職員・保護者・地域の人々とともに、一人ひとりが自分らしく学び、他者とともに生きる力を育む学校づくりを進めていくとしています。
- 運営:学校法人茂来学園(長野県南佐久郡佐久穂町、理事長:中正雄一)
- 茂来学園は、日本初のイエナプランスクールである大日向小学校・大日向中等教育学校を運営
- 受賞:2026年度グッドデザイン賞(受賞企業:株式会社 建築築事務所/事業主体:学校法人茂来学園)
出典:学校法人茂来学園


